前回は、ホームインスペクションの具体的な利用例をお話ししましたが、必ずしも住宅用途のみが対象ではないため、住宅以外の建物についてお話しします。
公的なところで、このホームインスペクションに相当するものに、「特定建築物の定期調査報告」があります。建築基準法に定められるこの特定建築物は、概ね、不特定多数の往来、利用される建築物が該当します。そのため、万が一にも災害が生じれば第三者に被害が及ぶことから、定期にその劣化や腐食などの状態を調べ、報告することが定められています。一般的なところでは、マンションや料理店、オフィスビルなどがわかりやすいところでしょう。ところが、報告しなくても実際に罰金を科されることはないため、形骸化していると言わざるを得ません。
怠ることでどういったことが起こるかと言えば、具体的なところでは、忘れた頃に起きる足場屋さんが単管パイプを落下させてしまい、通行人を死傷させる事故。ニュースを見て、工事現場の傍を通行しないようにしている方もおられるでしょう。これ自体は、工事の安全配慮上の問題なので、この件とは異なりますが、ある日、頭上からタイルや看板が落ちてくるということになります。
他にも、最近では手摺の劣化によって階段踊り場からの墜落事故がありました。これこそまさに維持管理の問題であって、定期調査を怠った、適切な調査ではなかった、指導に応じなかったなどが原因で、適切な維持管理を怠ることの恐ろしさの典型です。
これら事故が生じれば、莫大な賠償責任が課されるというのに、自覚のないオーナーが多すぎます。
巻き込まれるのは第三者であることが大半です。
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